コーヒーに常備されているミルクと
ガムシロップを一つずつ入れて 
混ぜる。

(ライトのボルトが緩んで他はしっかり
閉まっていたとして、ライトが落ちて
他の器具とかも落ちてくるって
あるのか?しかも一緒じゃなくて
数秒後に。
あの時は気づかなかったけど
冷静に考えたら、不自然?
でもそっち方面に詳しい訳じゃないけど
今さ気になったって)

「あの、そのステージを設営してた
会社って・・・!」
目の前の人が属していた会社だ。
配慮が足りなかったな。
「すみません」
「いえら前の会社のことなので」
(前?)
「あの会社は倒産しました。
1人の勝手で怪我人を出して存続なんて
できませんから」
「そうですか。あの一つだけいいですか?なんで3年経った今、その事を?」

「マスコミのスクープ魂はすごいですからね。完全にほとぼりが冷めるまで
待とうと思いまして」
(今はマスコミや週刊誌の他に一般人にも警戒しないといけない時代だからな)

アイスコーヒーをストローで飲んだが
氷が少し溶けて飲みやすくなっていた。
チーズケーキも思ったよりさっぱり
していて口説くない。
(また来ようかな)

でも男性は紅茶には口をつけず、
タルトもほとんど食べてなかった
「本当は自己満足なんです」
「自己満足?」
ケーキを食べる手が止まる。

「はい、封筒を郵便受けに入れてから
本当にあれでよかったのかとずっと後悔していました。
一度、直接お話した方が自分が
安心できるんじゃないかと」
(自己満足、ねぇ。)

「すみません、さっきは1つと言いましたがあと2つほどいいですか?」
「いいですよ、いくつでもなんでも
聞いてください」
顔色がほんの少し明るくなった。

「ありがとうございます。
どうして、寮、封筒を入れた場所を知っていたんですか?」
「Rainbow Roseを潰すと聞いた時、
娘がクラスメイトにアイドルグループの1人がいると言っていたのを思い出してその日の夜、娘が類くんのことを詳しく教えてくれてクラスの集合写真で顔を見せてもらって、翌日、尾行して封筒を入れました。」
(まぁそれまで防犯意識は
皆無だったからな、俺たち。
あれ、防犯カメラもない。
鍵だって盗まれたら簡単に合鍵を作れる。そもそもピッキングされたら・・・
セキュリティガバガバ過ぎない?
よく今まで問題なかったな)

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、すみません。考え事をしてて。
あなたは後悔していると言っていましたけど何も後悔することはないですよ。
最終的に出場を決めたのは俺たちなんですから。寧ろ感謝してるんです。」
ハッとして顔を上げた。

「あの文書で警戒することができました。知らなかったらもっと大怪我に
なっていたかもしれません。
あなたとこうして話すことも出来なかったです。
今でも色々なことが出来ているのは
あなたのおかげです。
ありがとうございました」

「そんな、俺は・・・」
しどろもどろに視線を泳がす。
「なら、ライブを見に来てくれませんか?それで自分の行動がここまで成長
させたんだと思ってください。
助けたことを誇ってください。」

男性は頷いた。
それから2人してケーキと飲み物を完食
して席を立つ。
お会計は別でしようとしたが、
大丈夫だと言われ一緒にお会計して
もらった。カフェをでて
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ聞いてくれて
ありがとう、ライブ楽しみにしてるね」
小さくだが笑っていた。

その後帰ったら舞たちがSNSで俺が
カフェにいたことがバレてしまった。
(うまく男性のことは避けて
撮ってくれたが)

機嫌を損ねた舞と雪希に今度奢る
約束をしてなんとか収まった。