「そういえばずっと忘れてたけど
舞が遊園地に行った日の早朝、
脱衣所にドライヤー置いたの舞?」 
あの撮影から数日後、俺は何気なく
聞いた

「うん、私。あの時まだ起きててさら
そっとドア開けたら蓮が降りてくの
見てたから」
「俺、ドライヤー、持ってるの知ってる
でしょ?」
「もちろん、でも夜中だし面倒がって
やらないで寝そうだなって」
「流石にもうしないよ」
「どうだか、」

舞はサンドイッチを包んでいたラップを
丸めて弁当袋の中に入れて、最後のおかずの
肉巻きを口に入れる。

(よく平日毎日お弁当作れるよね。
夕飯は類と代わり代わり作ってるけど。
一度コンビニでもいいって言ったら
プライドが許さないって聞かなかった
んだよな)

舞が弁当箱を片付けていると舞のスマホが
鳴った。
一瞬眉を顰めると弁当包みを持って、
じゃあ先に教室に戻るから、と
行ってしまった。

2人して弁当を片付けてから
「ねえ、類。人生相談してもいい?」
当たり前だが若干引いて
「え?人生相談って重すぎる。
ていうか年下に相談する?
先生にしたら?人生の先輩だよ?」
「ちょっと相談しにくくて。それに類、
人の弱みは握るけど他言しないじゃん」

「サラッとディスらなかった?」
引いていたけど席は立たないから
聞いてくれると思った。

「ちょっと待って、」
隣に座っていた類は立ち上がり向かいに
移動した。
「なんで向かい?」
「深刻な話は向かい合わせで聞くって
最近決めたんだ。特に理由はないけど」
不思議に思いながらも話した。

親の兄弟の扱いに差を感じていた事、
妹を間接的に殺してしまった事、
この前、夢でなんで生きてるのと 
聞かれて返せなかった事。

しばらく考え、
「その、気を悪くしないで欲しい。
後悔は、してるんだよね」
「もちろん、じゃなかったら夢に
出てこない」
「だよね。その、蓮は妹さんのお墓の場所
知ってる?」
(的確に確信を突いてくるな)
「、知らない。前に聞いたら、
殺したくせに墓参りなんて図々しいって。
それから何度聞いても教えないの
一点張りで」

「・・・そもそも、
お墓ってあるのかな」
「え?」
「だって、蓮の話聞いてると
お墓作るところ見てないんでしょ?
お墓ってお葬式が終わってからすぐに
作ると思うけど。」
「お葬式・・・」
(記憶から抜けてるだけだと思ってたけどお葬式したか?
ショックすぎて覚えてないだけ?
でも茉里が死んだって聞いたあと、
顔を見てない)

青くなる俺の顔を見て
「確信がなければ聞いてみたら?」
「それに他に気になる点はある」
「気になる?」
「ご両親はかなり妹さんを溺愛していたみたいだね。
前にあった時は父親は程よい距離って
感じだったけど。
そんなに溺愛してた娘が居なくなって
すぐに日常へ戻れる?」

類の次々の指摘に、頭を捻る。
(あの両親が茉里が死んで普通なんて
絶対にありえない、
もしかして、・・・いや・・・まさか、
茉里は生きてる?)