まだまだ言いたいことはあったが予鈴がなり
各教室に戻っていく。

(スルーしてたけど会長がね、
実感ないな、でも勘違いかもしれないし。
そもそもなんで私?
会長、顔はいいし、この前の中間テストの
結果も良かったらしいから頭もいいはず。
先生たちにも信用されて、非の打ち所が
なさそう、モテないはずないから
よりどりみどりのはず。
なんで気のない私?もしかして立花みた)

「日比谷!」
立花の名前が浮かんだ瞬間、本人に呼ばれた
「立花、どうしたの?急に」
「これやるよ」
黒とピンク色の小さな紙袋。
「いいの?」
「やるって言ってるんだからいいに
決まってるだろ?」
と呆れられた。

星柄のマスキングテープを剥がして取り出すと金塗装されたロックと銀塗装されたキー、
2つのチャームが付いたストラップ。
ロックの四隅には青、
キーには紫のラインストーンがついていた。

「可愛い、でもなんで?」
「この前誕生日だったんだろ?この前」
(この前みたいな上からの態度は少しだけ
柔らかく見える)
「なんで、私の誕生日知ってるの?」
「日比谷のアカウント見つけて、
そこから」
「アカウントって・・・
作ったの昨日なんだけど」
「偶然見つけたんだ、」
(本当?)

「でも、ごめん。受け取れない」
「え?」
眉を顰めた
「受け取ったら、期待させそうだから。
立花の事」
どう返されるか内心ビクビクしていたが
軽快に笑った。

「放課後、少しだけいいか?
時間をくれ、5分だけでいい。
教室にいてくれればいいから」
「え、あ、これは・・・!」
言い終わる前に立花は走って行った。

ストラップを再び紙袋に入れて
ハンカチの間に挟んでポケットにしまう。
(挟んでおけば音はしないはず)

それでも気にしながら午後の授業を受けて
放課後。
鞄に急いで教科書をしまい教室を出る。
「日比谷、」
「立花・・・」
焦りながら早足で近づく

「早く」
「え?」
「早くして!急いでるの!」
悪いと思いながらも急かしてしまう。
「俺、春っていう妹がいるんだよ。
それで春にあの時のこと言ったらドン引き
されてさ。それで考えた。3年もあるんだから焦る必要はないんじゃないかって。
ゆっくり時間をかけて、友達になって
最終的に恋人として選んでもらおうって」
(短時間で意識の変わり方がすごいな)

「だから、あれは単純に誕生日プレゼント
として受け取ってほしい」
真剣な目は嘘をついているようには
見えなかった

「わかった、ありがとう、立花」
「話は終わり、急いでるのに悪かったな」
「いや大丈夫、さっきは急かせてごめん」
「別に、日比谷も忙しいってわかってる
から。じゃあ、俺部活あるから」
「うん、じゃあね」

立花は反対方向へ走っていく。
私も昇降口まで急いだ。