夕方頃には無事にアトラクションを制覇して
お土産を見ている。紗南は隣の建物に
行ってしまった。

ちょうど後ろの棚を見ていた女の子たちの
会話が聞こえてきた。
「ねぇ、私の従兄弟がアイドルを
見たんだって?」 
「もしかしてさっきのメール?」
「うん」
「でもユイ、アイドルに興味あったっけ?」
「いや全然、でも文面的にかなり興奮
しててさ、確かレインボーローズって書いてあった気がする」
(ん・・・?)
「へぇ、虹色のバラか。花言葉は無限の
可能性だったっけ」
「詳しいね、でも4人らしいんだけど
タイミング悪くて3人しか
見れなかったんだって」
「仲、悪いとか?裏では不仲って
結構あるよね」
「あー、どうなんだろうね。
私たちと同年代らしいけど私は無理かな」
「私も。表面上仲良くしないとダメとか
ホント無理。芸能人はすごいよね」

女の子たちは別の場所へ移動していく。
「興味ない人があれこれ詮索しないで」
「何か言った?」
独り言はちょうど戻ってきた紗南に聞かれた
「・・・別に」

しばらくしてお土産は買い終わりパークを
出て電車に揺られる。
「じゃあね、紗南」
「うん、また今度」
最寄り駅で、電車の中で紗南と別れた。
改札を出て薄暗い道を歩く。
(慣れたとはいえちょっと怖いな。
急いで帰ろう)

玄関を開けると静かでちょっと怖い。
(靴はあるから3人とも帰ってる
はずなんだけど)
「ただいま、」
独り言のように呟く。

(あ、この家に来る前と同じだ。
帰っても誰もいない。
ずっと誰かはいたから忘れてた。
寂しいって気持ち、疎外感。
忘れてたのに思い出しちゃう)
そんな考えは次から次へと生まれる。
踏み込んだらますます疎外感が
突きつけられそうで玄関から動けなかった。

少し外の空気を吸おうと玄関のドアを
開けた瞬間
「待って!」
手を掴まれて引き寄せられる。
「ゆ、雪希」
焦っている雪希の後ろから類と蓮が出てくる
「急に外に行こうとしたからびっくりした」
「類」
「俺たち、驚かせようと思っただけなん
だけどまずかった?」
「そんなことないよ、蓮」

靴を脱いでソファに座る。
「ちょっと早いけど誕生日おめでとう、舞」
類が渡してくれた少し思い箱を開けると
小さめのマグカップが入っていた。
カップの下から4分の1くらいから段に
なっている。
(かわいい)
「ありがとう、でもハートの角度
おかしくない?」
白に紫のハートが描かれているが
尖っている部分が右下を指すように
斜めっている。
「それはね」
雪希がそういう時3人は顔を見合わせて、
キッチンへ向かった。

蓮は淡い赤のハート。
雪希は緑のハート。
類は青いハート。
それぞれハートの位置は異なっていた。
青いハートのカップの上に私のを静かに
重ねた。
(だから下の方少し段になってたんだ)
緑のハートの上に赤いハートのカップを
重ねた。
「あ、」
全てのカップのハートは尖った部分が中央を向いて四葉のクローバーの形になった。