162話
「こ、交換する?」
「だ、大丈夫!」
「そう?」
(でも辛そうだな、仕向けたの俺だけど)
何故か良心が痛んだ。

「ねぇ、やっぱりそっち一口ちょうだい」
「え、子供扱いしてる?」
疑う目に
「違うよ、単純にどんな味するのかなって」
渋々、缶を差し出して俺のリンゴと交換して
軽く揺らすとまだ缶の半分以上ある気がする

口に含むと確かに苦い。でも今の俺には
ちょうどよかった。

「ねぇ、やっぱりグレフル俺飲んでいい?」
「え、いいけど・・・」
(心なしか嬉しそう)
「雪希、最高学年になったけど学校
どんな感じ?いじめられてない?」
「すごい直球で聞くね。」

「まぁ、2年の頃は冷やかされたり、
ヒソヒソされたりあったけど、
今はない、かな?」
「何で疑問系なの」
「新一年生が入学してから男子数人が
翌日わざわざ3年のクラスに来て、
中原先輩いますか〜?
って呼び出して冷やかしとか受けたんだけど適当に受け流してたら、急に1年が
すみませんでした〜
って逃げていったんだよね」
「ふーん」
「振り返ったら笑顔で無言の圧を欠けている宮本さんと冷水の如く冷たい目で圧を欠けている辺里くんがいてさ」
(やらかしたな、新1年生
敵に回しちゃいけない人にリークされて)

ジュースを飲んで、その1年生たちに同情する
「だから僕が気づいてないだけで注目の的になってると思うんだよね」
困り顔でそう語る雪希を見て
(俺はその2人に挟まれて平然としていられる雪希が怖い)

「5月の初めにある新入生歓迎会の
レクレーションで2人とも
頭を悩ませてるんだ。
ラフすぎても緊張するだろうし硬すぎてもとっつきにくいと思うしどうしよう
って嘆いてたよ。生徒会って思ったより
やること多いんだなって内心任されなくてさよかったって安心してる。
アイドルの傍ら生徒会執行部なんて
無茶な話だけどね。」

「推薦ってどんな感じで?」
「会長から今後、約半年学校を
任せられるって人を生徒会室に呼び出して
直談判するんだ。他の役職も同じ感じで
決めるって、聞いたかな。
川桜はどんな感じで決めてるの?」

「川桜は推薦かな、推薦されて立候補
すれば、選抜メンバーに加わる。
それから応援演説、立候補者演説が
あって最終的には全校生徒の投票で決まる」
「思ったより大規模だった・・・」
「ていうか辺里くん生徒会長なの?!」
「うん、辺里くんが会長、
宮本さんが副会長」
(お互いが暴走しかけたら片方が止めることができる、なんだかんだいいコンビなんだよね、あの2人)

「僕たちの仲の良さは校内でよく話題に
上がってさ、しかも会長と副会長がいるからなんか僕、女帝って呼ばれてるらしいんだ」
「じょ、女帝!?」
思わず聞き返してしまった。
(でも言われたらイメージできる。
両サイドに会長と副会長、1年生からしたら
只者じゃないかもしれないな)

「2年の時は隣のクラスとか後輩から、
ラブコメに発展しないの?
ってよく聞かれた」
口は楽しそうだけど顔は困っている
「どうしたの?」
「いや、あの2人が付き合ったら双方から相談がやまなそうだなって」
「愚痴とか惚気とか聞かされそう」
「愚痴を聞いてたと思ったら途中から惚気になったりして」

同じ屋根の下にいるのに話題は尽きず
朝日が登るまで話し込み、気づいたら2人
して寝落ちしていた。