(思い出を上塗り、か)
引き出しから俺ににつかわしくないピンクと白のチェックの封筒を取り出す。
中には何か軽く硬いものが入っているのが
分かる。
茉里がくれたものだ。

〜回想〜
「私が退院するまで開けちゃダメだからね」
と言われた。
荒れに荒れていた俺は笑顔で封筒を受け
取って帰りの車の中で握りつぶした。
「茉里は優しい子よね。こんな子でも兄だと慕ってくれるんだもの。
あなたも努力して茉里から、頼られるようになりなさい」

(は・・・?慕う?頼る?意味わかんない。
勝手に慕ってきてるんだよ。
慕って欲しいなんて思ってないし
頼って欲しいとも思ってない)

母さんは口を開けば茉里の事ばかり。
「あ、コンビニがある。茉里が好きそうな
雑誌あるかな」
駐車場に止めて車を降りて母さんに
ついていく。

「母さん、俺は・・・」
「蓮はまだお小遣いが残ってるでしょ。
自分で買いなさい」
「あ・・・うん」
茉里の時は笑顔で、楽しそうにしていたのに俺には冷たく目も合わせてくれない

(ここにいるのは茉里じゃなくて俺だよ。
なんで俺を見てくれないの?
なんで怖い顔をするの?
俺は何をした、俺はバカだから言ってくれ
ないと分からないよ。言ってくれたら
なおすよ?できるように頑張るから・・・!
だから・・・!俺にも笑ってよ、)

明らかに違う兄妹の扱いをする両親に嫌気がさして、みてもらえている茉里に嫉妬して、
あの日、俺は・・・

〜回想終了〜
今思えば、怒りとか嫌悪感とか感情の矛先を茉里に向けて最低って言葉しか出てこない。

やりたかったかもしれない事ができる機会を奪った。
行きたい場所だってあったはず、
友達と笑って遊ぶ時間、
趣味に打ち込む時間、
勉強する時間、
真剣になる瞬間、
呼吸する時間すら俺は・・・。
封筒を引き出しに戻して、
電気もつけっぱなしで、ベットに入り布団を頭まで被る。

茉里と隣を歩いている、笑っていた茉里。
俺の記憶にいる茉里より少し成長している。
「次はあっちに行こう!」
楽しそうにはしゃいで腕を掴み、足早に踏み出した瞬間、ガラッと場面は変わる。

病室だ。俺にてをのばしたあのばめんだ。
(今度こそ・・・!)
と思ったが、俺の思考は関係ないと
言わせるようにそこにいる俺は病室の外へ
飛び出した。

また場面は変わり暗い背景に光のない瞳、
正気を失くした茉里がいる。
茉里に触れようとしたら軽く後ろに下がった「茉里?」
俺を見る目は笑っていた。
「私、もっと生きたかったんだ・・・」
「え、」
呟きをよそに茉里は続ける。
「私、行きたい中学があったんだよ。
やりたいこともあった。
あの時、お兄ちゃんがあんなことしなければいけてたはずなの!できていたはずなの!
なんでステージに立っているの?
なんで仲間といるの?
なんで笑ってるの?
・・・なんで生きてるの?」
弾けたように俺の意識は覚醒した。