手を伸ばそうとすると
類が手首を掴んだ、
「類?」
類の顔はどこか焦っているような感じで。

「あーあ、」
母さんは呟いたと思ったら低い声で言った
「引っかからないか」
久しぶりに聞いた低い声に身の毛がよだつ
「うまくいけば自慢の子だって吹聴
できたのに。着信拒否?したよ、なにが
いけないの?かかってきてほしくない相手
を拒否するのは当たり前でしょ?」
「話が矛盾してない?
かかってきてほしくないのに戻ってきて
欲しいなんて」
「だって有名なんだもん、
自慢したいのは当たり前でしょ?
じゃなかったら、どうしてそんなことをしてるあなたを迎えにくると思うの?」
(開き直ったな)

「じゃあ母さんは僕を認めてないんだね、」
そう聞くとにっこりと笑って
「もちろん、いわばあなたは異端児なの、
中原家の恥。
でも、そんな子供を受け入れた寛大な母親、なんてメディアで広まったら嬉しい
じゃない」
さも当然と吐かれた言葉に嫌気がさす。
(もう、いやと言うほど分かった。結局、
僕の外見だけで内面は見てくれないんだね)

有名になって手のひら返す
ように認められても虚しくない?

(なんだ、辺里くんの言う通りだな)
「僕は母さんたちを認めない、
もう僕たちの前に現れないで」
「認めないって、親に向かって!」
手をあげられたが、別に痛くないし怖くない
「雪希!、」
「先に突き放したのはそっちだよ、
なに自分のこと棚に上げてるの」
急いで類の腕を引っ張り、中に入って
鍵を閉める。

しばらく喚いていたが、反応しないでいると帰っていった。
「雪希、」
捨てられた子犬のように僕を見る。
憐れんでるのかな、
「大丈夫、類、痛くないから。
ごめんね、うちの問題に巻き込んで」
「いや、別に」
ソファに座るとどっと疲れが出てため息を
ついたところに舞たちが帰ってきた。

「ということなんだ」
「大変だったんだね」
よく見ると雪希の頬か少し赤くなっていた。
「でも、かっこよかったよ、雪希」
「やめてよ類」
でも2人はそんなこと気にしていないくらい
楽しそうだった。

「あの、ちょっといい?」
おずおずと手を挙げたのは蓮。
「あのさ、受験のことなんだけど」
「俺はまだ先だよ」
「僕なんてもっと先だよ」
2人をスルーして続けた

「俺、前に言われたんだ、七瀬さんから
予定調和のためにもみんな同じ高校のほうがいいと思うって。」
「それはそうだけど」
「蓮はどこ受けるつもりなの?」
雪希の問いに芯のある声で
「梅原」
「「梅原!?」」
「え、僕いけるかな」
「あそこって偏差値結構高く
なかったっけ?」
「でも蓮、最初は椿宮にいくって
言ってたんだよ」
「「椿宮!?」」
(この2人も結構ハモるな)

「椿宮のほうが僕は無理だよ」
「椿宮の方が名門校だけど、
高校除いたらやっぱり
川桜だよな」
「制服は可愛いし、学祭と運動会は毎年
交互だけどその分本格的だし、
校舎綺麗だし」
「その分、勉強はキツいけどな」
テンション高い雪希に比べて
蓮は今度は力無く答えた。
(それはわかる。)

ー翌日ー