杏奈さんたちが戻ってきて、レッスン再開
をして
「「ありがとうございました」」
明日は杏奈さんたちが予定があるらしく 
休みになった。

「明日、なにしようかな」
「学校だけどなまぁ、明日か、明後日に
一度寮に帰ってくるんじゃない」
雪希は少しムッとした。
「舞たちが帰ってくるのは嬉しいけど
素直に喜べない自分がいる、みたいな」
「人の心情を的確に当てないでよ」
「え、当たった?」

そんな会話をする2人を遠くから見つけた
人がいる、
「雪希?」


舞たちに話したのはここからだ。

今日、学校から帰ってくると玄関が騒がしい
「珍しい、お客さん?」
近づくと雪希が女の人と揉めていた。

「類、」
俺を見るとホッとした顔を見せた
(なんか嫌な予感がする)
「こんにちは」
「こんにちは、雪希の母、皐月です。」
(この人が雪希の、優しそうだけどなにを
言い争ってたんだろう)
「どうしたの」 
青ざめる雪希に聞くが
「それが、」
「他人がうちの問題に首を突っ込まない
でくれる?」
皐月さんに遮られる。

(ああ、いやだ。笑顔だけど有無を言わせない圧力。蓮のお父さんと同じタイプだ。
だったら)
「確かに俺は雪希から言わせたら血の繋がりのない他人です。ですが遠くの親戚より
近くの他人。少なくともあなたより雪希の
ことを知っていると思いますよ。」
「なんて口の利き方なの。躾がなってない」
爽やかな笑顔で言ったが逆に怒らせて
しまった。
(まぁいっか、)

「あの、母さんは、なにしにきたの」
「それはね、雪希。家に帰ってこない?
今は無理でもいつでも迎えるよ」
雪希の表情であまり良くない家庭なのは
察した。

ー帰ってこない?ー
そう言われた瞬間色々な考えが脳裏を過った
(帰ってこない、って押し付けたのはそっち
なのに虫が良すぎる)
「お父さんも反省しているの、分かって
やれなかったって」
(父さん、1人息子だもんね。寂しいのは
わかる。でも)

一度でも電話
とかメールとか受けたことある?

「なら、どうして今まで電話の一本も
くれなかったの?」
「それは、いそが、」
「僕、一回かけたんだよ、父さんにも
母さんにも。でもどっちも出なくて、
そのあとかかってくることはなくて。」
「え、嘘」
そうこぼしたのを聞き逃さない
「てことは、知らなかった。
それって着信拒否?」
「拒否だなんてそんな、」
「今、スマホ、母さんに繋げてるけどなにも起こってないじゃん」
(まぁ嘘だけど)

「え、あ、」
母さんは慌てた顔をして、スマホを
とることなくすぐに肩を落とした。
慌てても無駄だって観念したんだろう。
(本当に着信拒否してたんだ)
「我が家はこの寮だよ。
いつでも迎えてくれたのは
ばあちゃんたちだよ。
あの家じゃない。
僕はもうあそこには戻らない。」
青筋を立てている母さん。
(やりすぎたかな)
「母さん?」