それがサクとの出会い。
今でもたまにサクと話をしている。
雪希ちゃんがサクの存在を知っているかは
わからない。でも咲に友達ができて本当に
嬉しい。


僕は母さんに電話をかけてみることにした。
(辺里くんにはあんなこと言ったけど、
やっぱり気になる)

緊張しながら母さんにかけるとすぐに切れて
ツー、ツーとだけ流れる。
(・・・、まさかの着信拒否!?
いやいや、通話中なだけかもしれないし)
気を取り直して父さんにかけると同じだった
(これは間違いなく着信拒否だな)

緊張がほぐれて、ため息をつく。
(心のどこかでは分かってた。1年間も母さんたちから連絡がないから見限られたんじゃ
ないかって)
悲しいという気持ちはあまりなく、
だろうな、と思った。
スマホをしまい、寮に向かって走る。
寮に帰るとみんなどこからか帰ってきた
ところのようだった。
「「「おかえり」」」
「・・・ただいま」
(本当にみんなと仲間になれてよかった)

テーブルの上には沢山の布生地、ビーズや
リボンなどが散らばっていた。
「どうしたの?これ」
「まあね、」
「いろいろ?」
指をさして聞くとはぐらかしそそくさと自分の部屋に持っていった。

数日後、午前3時ごろに目が覚めてキッチンで水を飲んで部屋に戻ろうすると蓮の部屋から明かりが漏れていた。
(こんな時間になにしてるんだろう)

音を立てずに静かにドアを少し開けて覗くと
何かを作っているようだった。
(この前の布だ。)
すごく真剣な顔だったがたまに針を刺すのか
一瞬だけ辛そうな顔をした。
(あんなに真剣になるなんて)
これ以上はやめようと思って静かにドアを
閉めて部屋に戻ったが
さっきのが気になってあまり寝付けなく
なった。

それから約1週間後の8月3日。
「「「雪希、誕生日おめでとう!」」」
みんなから渡されたのは初めてのライブの
衣装を着たペンギンのぬいぐるみだ。
(嬉しい、すごく嬉しい!
でも蓮のこと見ちゃってすぐに結びついたからどんなリアクションすればいいのか!)

「雪希、気に入らなかった?」
しょんぼりする舞に
「ち、違うよ。蓮が何かしてら あ、」
カミングアウトしてしまってから舞に
根掘り葉掘り、聞かれて怒りの矛先は蓮に
向いた。
「ちょっと、蓮!1番気をつけてって言った
のに!」
「ご、ごめんって。まさか見られるなんて
思ってなくて」
蓮は銃口を向けられたように手をあげて弁明した。
「まぁ俺は分かってたけど。」
類がそう言った瞬間、舞と蓮の首がこっち
を向いた。
(今のはちょっと怖かった、軽くホラーだな)

「え、だって明らかに何か気にしてるよう
だったじゃん雪希」
「そんなにわかりやすかった!?」
「うん」
「そんなぁ、でもありがとう、みんな」
腑に落ちないような顔をしていた舞と蓮。
でも僕がいいならいっか、と納得してくれた

夏休みの宿題を片付けながらライブの準備を
したり忙しく動いていたが、ライブ当日。