彼のことだ。

怪しい人だとかんちがいされてる。



「執拗に話しかけてるわよね。あなた、おとなしいから……ストーカーってやつ?」

「彼は悪い人じゃ、ないです」




いつ見られてたんだろう。

ハヤシさん、仕事終わったら一目散に帰るのに。



「そうなの? それじゃあまさか――恋人?」




彼とわたしが、恋人……!?


「ないです! 絶対に! ありえないですから!」

「そうよね。あなたの恋人は……ふふっ。画面の中にいるもの」



なんで乙女ゲーやってることバレてるんだろう。

わたし、職場でヲタクなこと話したことないのに。



エスパー!?



「あら。ウワサをすれば」

「……え」



気づかないうちに、彼がレジの近くに立っていた。



「こんにちは!」



いらっしゃいませと言うべきだったろうか。


いや、今はそんなこと、どっちでもいい。