「待……ああっ」 行っちゃった。 嵐のように現れ、嵐のように去る人だな。 こんなときに限ってレジが混み始める。 相談ってなに~!? 「い、いらっしゃいませ」 きっと、目の前のお客様に わたしの声は届いていないだろう。 イヤホンをしているから。 「あたためますか?」 一応聞いてみるが返答はない。 その方が、こっちも気楽でいいけどさ。 「ありがとうございました」 基本はマニュアル通りの接客。 決められたことをしているだけ。 人との会話が苦手なわたしにとって、好都合。 それでも――