――――ッ!!!



「い……いえ」



例の番号は、スマホのメモ機能に控えている。

手のインクは時間がたてば消えちゃうから。


でも、まだ、登場していない。


躊躇っているのだ。



なにせわたしは、生まれてから一度も電話帳に男の子を登録したことがないから。



「からあげさんレッド」



また今日もからあげさん!



「かしこまりました。ちなみに、今日から一つ増量サービスやってます」

「そうか」



気のせい、かな。

彼の声に元気がないように感じるのは。


増量あんまり喜んでくれてない?

6個より5個がちょうどよかった?



「お待たせしました」

「実は。折り入って相談がある」

「え?」

「忙しそうだな。また来る」