にっこりと笑った私に、MCの女性が機転を利かせて大きな声で答えた。

「桜澤先生、公開告白をありがとうございます~! ラブラブですね~!」

悪意あるコメントをした女性は配信カメラに映らないようにスタッフが壇上から下ろしていた。

正直、胸がどきどきしていた。桜澤夕子の仕事上、言わなくてもよかったのかもしれない。
だけど、個人である八田夕子として言いたかった。私は八田史彰を愛しているという真実を、誰にも誤解されたくなかった。

ちらっと見えたモニターには視聴者からのコメントが映っていた。

【イメージアップっていうか、桜澤先生のイメージはずっといいよ】
【どんな桜澤先生も好き】
【ラブラブごちそうさま】
【夫婦のことに首を突っ込むのは無粋だよね】

そんな優しいコメントの数々に、少しだけ涙をこらえた。イベントはまだ続くのだから泣いていては駄目。
誰もが悪意の塊で私たちを見てはいないし、発信した情報を受け止めてくれる人はいるのだ。ずっと凝り固まっていた心がするするとほどけていくような感覚だった。