「どうした? 夕子」
私はおそらく真っ青な顔をしていたのだろう。史彰がぎょっとした顔で私のもとへやってくる。私は言葉にならず、震える手で手紙を差し出した。
史彰は「読むよ」と確認して、その手紙に目を通した。読み終えて、手紙を封筒にしまうと、史彰は顔をあげた。
「夕子、この手紙は俺の方で保存するから」
落ち着いた声だった。私はこくんと頷く。
「またこういった手紙が届いたら、俺が帰ってくるまで開けないでいい」
「史彰、私……」
「大事なことだからまず頭に入れてほしい。『きみは何も悪くない』。勝手に期待をかけて、得られなかった対価を当然とばかりに要求してくる人間に、罪悪感を覚えなくていいんだ」
私ははじかれたように彼を見た。
私を見る目は冷静でありながら、真剣だった。
「うん……そうだよね。そうなんだよね」
「夕子は真面目だから、そういった視点でショックを受けてほしくないんだ。期待に背いてしまったと思ったらいけないよ。おもねって表現を変えれば、相手は喜ぶかもしれないけれど、きみのしたい仕事ではなくなってしまう。相手の要求がエスカレートする可能性だってある」
そうだ。私は一瞬だけど、視聴者を裏切った気持ちになってしまった。こんなふうに一方的に気持ちをぶつけてくる他人に、迎合してはいけないというのに。
私はおそらく真っ青な顔をしていたのだろう。史彰がぎょっとした顔で私のもとへやってくる。私は言葉にならず、震える手で手紙を差し出した。
史彰は「読むよ」と確認して、その手紙に目を通した。読み終えて、手紙を封筒にしまうと、史彰は顔をあげた。
「夕子、この手紙は俺の方で保存するから」
落ち着いた声だった。私はこくんと頷く。
「またこういった手紙が届いたら、俺が帰ってくるまで開けないでいい」
「史彰、私……」
「大事なことだからまず頭に入れてほしい。『きみは何も悪くない』。勝手に期待をかけて、得られなかった対価を当然とばかりに要求してくる人間に、罪悪感を覚えなくていいんだ」
私ははじかれたように彼を見た。
私を見る目は冷静でありながら、真剣だった。
「うん……そうだよね。そうなんだよね」
「夕子は真面目だから、そういった視点でショックを受けてほしくないんだ。期待に背いてしまったと思ったらいけないよ。おもねって表現を変えれば、相手は喜ぶかもしれないけれど、きみのしたい仕事ではなくなってしまう。相手の要求がエスカレートする可能性だってある」
そうだ。私は一瞬だけど、視聴者を裏切った気持ちになってしまった。こんなふうに一方的に気持ちをぶつけてくる他人に、迎合してはいけないというのに。



