『一刻も早くあの浮ついたチャラ男と別れてください。あんな男に夢中になってダサい料理ばかりを更新している桜澤先生を見るのはつらい。あなたがそんな馬鹿女に成り下がるなら、私にも考えがあります。せめて動画やSNS、あなたの生活スタイルやファッションは元の素敵なあなたを保ってください。家庭くささを微塵も出さないあなただから応援してあげたんです。これからも変わらずにいてください。私からのお願いです』

これは脅迫にあたるのではないだろうか。大袈裟だろうか。
しかし、私はその文面から見える狂気的な愛着にぞっとしていた。手紙は最後にこう結ばれてあった。

『色々書いてしまいましたが、すべては桜澤先生とそのファンのためを思ってのことです。桜澤先生が大好きです』

大好き。そう結べばチャラになるのだろうか。
応援するファンだから、何を言ってもいいのだろうか。

明らかに狂気的な文面におののきながらも、私はファンに落胆されていたというはっきりした事実を目の当たりにしていた。
注目をされるために動画を続けていた私だ。現代的なセルフマネジメントだったはず。
視聴者に飽きられる、視聴者が離れていく……こういった事象にはやはりメンタルダメージがある。こうして熱心なファンからまっすぐに『キャラ替えしたあなたが嫌い』と言われ、ショックを受けているのは間違いなかった。

「ただいま」

ドアが開き、私は顔を上げる。そこには史彰がいた。