「さ、さすがに命だから。私たちの勝手な都合で、産むわけにはいかないよ。いろんな考えがあるとは思うけど、私個人は赤ちゃんは愛し合う夫婦のもとにくるのがいいって感じてる」
「いや、そうだよね。余計なお世話だったわ」
若菜はまだぺったんこのお腹を撫で、自嘲的に笑った。
「赤ちゃんができて考え方が変わったのかな。最初は揉めないようにね、なんて言っておきながら、夕子たちにおせっかいをやくなんて。本当にごめん」
「ううん、私はクールな若菜が母性に目覚めるのが神秘的で楽しいよ。妊娠ってホルモンに変化があるっていうものねえ」
そんな返しをしてふたりで笑ったけれど、私の頭の中には“赤ちゃん”という単語が刻み付けられたのだった。
“赤ちゃん”“妊娠出産”考えていなかったわけじゃない。
一般的な夫婦なら、一度は考えることだろう。子どもを持つか持たないか。それは人生設計のひとつだ。
だけど、契約婚の夫婦にそれは当てはまらないだろうと、私はスルーしてきた。史彰もそのはずだ。
一方で、史彰が男性なのだという点も頭をよぎる。
男性は一般的に女性より性的な欲求に素直だ。彼はそういった欲求を女性相手に発散したくならないのだろうか。真面目なキャラクターを確立したいから結婚した彼は、おそらく妻以外の恋人は作らないだろう。そうだとしたら、発散の場なんてない。
「いや、そうだよね。余計なお世話だったわ」
若菜はまだぺったんこのお腹を撫で、自嘲的に笑った。
「赤ちゃんができて考え方が変わったのかな。最初は揉めないようにね、なんて言っておきながら、夕子たちにおせっかいをやくなんて。本当にごめん」
「ううん、私はクールな若菜が母性に目覚めるのが神秘的で楽しいよ。妊娠ってホルモンに変化があるっていうものねえ」
そんな返しをしてふたりで笑ったけれど、私の頭の中には“赤ちゃん”という単語が刻み付けられたのだった。
“赤ちゃん”“妊娠出産”考えていなかったわけじゃない。
一般的な夫婦なら、一度は考えることだろう。子どもを持つか持たないか。それは人生設計のひとつだ。
だけど、契約婚の夫婦にそれは当てはまらないだろうと、私はスルーしてきた。史彰もそのはずだ。
一方で、史彰が男性なのだという点も頭をよぎる。
男性は一般的に女性より性的な欲求に素直だ。彼はそういった欲求を女性相手に発散したくならないのだろうか。真面目なキャラクターを確立したいから結婚した彼は、おそらく妻以外の恋人は作らないだろう。そうだとしたら、発散の場なんてない。



