「実際、史彰が好きだから作るのよね、けんちん汁。あと、親子丼とか焼肉定食とか、がつっとした料理が大好きで。アメフトをやってた頃と同じ気でいるのかな。いつも大盛りで食べたがるから、つられて私も一緒に食べちゃって困るわ」
「少しふくよかになるのも、おっかさん感が出ていいかもよ」
「あのノリで食べてたら、ふくよかじゃなくて健康に悪い太り方しちゃうよ。史彰は私より三歳上だし、この先も健康でいてもらわなきゃいけないから、考えなきゃとは思うんだけど、あれほど嬉しそうに食べてくれるとねえ」

うーんと唸る私を若菜が笑う。

「仲良くなったわねえ、本当に」
「相棒としてちょうどいいのよ。私は史彰の仕事ぶりがわからないけれど、人間的にはすごくいい人だしね。イケメンでハイスペックなのに、結構おっちょこちょいだったり、食前にお菓子を間食して私に怒られたり……」
「そういう姿を見られるのも結婚の特権ね」

確かに、他人と極端に親しくなるのが結婚なら、私しか彼の本性を知らないのだ。世間の人が彼をどう思おうと、私は彼の真の姿を知っている。不思議なものだ。

「私がおばさんっぽいっていうか、普段からちゃんとしていないのも史彰にバレてきてる気がする」
「ああ、夕子って仕事のイメージ以外で服買わないもんね。髪もメイクも、動画のためでしょ」
「うん。ジャージで掃除していたり、スキンケアをサボってるところも見られてる。そういうところを見て『夕子って普通で落ち着く』って言ってくれるから助かるかな」