「胃が強いなあ。それだけで私の夫として合格」

そう言って私はスマホをさっと取り出す。
史彰は顔を洗っただけでルームウェア姿。ダイニングテーブルにこれから食事という様子でついている。しかし、私が向けたスマホににっこりと爽やかな笑顔を見せた。
一枚撮影し、画像を彼に確認してもらう。

「どう? 『彼の朝ごはんは昨晩食べられなかったお魚』ってつけるけどいい?」
「あー、うん。いいよ。でも、俺ここ髭見えてない? イメージ悪くないか?」
「寝起きの生活感がプラスになっていいでしょうが」
「あ、なるほどね。生活感は大事だよな、俺にも夕子にも」

私は深くうなずき、ささっといくつかのSNSに投稿。すぐにいいねがいくつもつく。

「安心して。史彰は寝起きも最高にイケメンだから」
「うーん、不本意だけど。それが喜んでもらえるなら」
「史彰のオフショット見たさに私のフォロワーめちゃくちゃ増えたわよ」

おそらくは史彰を男性として推すがゆえに、妻の存在が面白くなくてチェックしているという層もいるだろうけれど。

私は史彰の向かいの席につき、サラダを無造作に食パンに挟んだ。彼もまた眠そうにあくびをしてから、お箸で鯛の身をつまみ、大きく開けた口に運ぶ。

私と史彰は、非常にいい関係を築けていると思う。
表向きは夫婦なので、動画やSNSなどではちょこちょこ仲良しをアピールをしつつ、家ではただのルームメイト。気は遣わないように決めて、嫌なことは我慢せずに口にだす。そうすることで円満な仮面夫婦生活を継続するのだ。
結婚から二週間、一度ももめていない。