申し訳ないけれど、私も彼の写真を見たとき「遊んでそう」と考えた。あまりに整っていて、笑顔も堂に入っていて、ハイスペックな肩書を持っていたら女性関係は無敵に見える。

「テレビの仕事はサービスのようなもので、事務所の広告塔になったつもりで請け負ったのですが、結果弁護士としての本業にも影響が出ているんです」
「“チャラい”と……」
「そう“チャラい”弁護士に我が社の顧問なんか任せたくない、と。だらしないイメージがついてしまっているんです。とんだ風評被害です」

真剣に説明する彼はほとほと困り果てているようで、眉根を寄せ苦悶の表情を浮かべている。写真ではわからなかったけれど、
表情豊かな人ようだ。

「そこで、イメージのいい奥さんをもらって家庭人として落ち着いているアピールをしたいわけですね」
「そうなんです。桜澤さん、話が早い」

両手を打って私を見つめてくる八田さん。やはり真顔に戻るととびきり顔がいい。

「桜澤さんにとって、弁護士の夫というのは世間的にいいアピールになりませんか?」

私は少し考えて、頷いた。これはこちらも手の内をすっかり明かすべきだろう。そのほうがいい。

「家庭的な料理研究家を目指していました。ですが、ウケを狙うために作った自分のイメージに苦しめられています」
「ああ、桜澤さんのお料理、すごくスタイリッシュですよね」