藍ちゃんの驚く声が聞こえる。相当な量の垢が取れたようである。もう一度、背中に感覚がある。僕の背中の表面の、醜い塊がごっそりと、根こそぎ剥がされた感覚が体中に伝わってきた。リサさんの施術は凄かった。油断すれば軽い悲鳴を上げてしまいそうになる程、心地よいものだった。



 そしてそのヘラは藍ちゃんへ戻される。彼女の手つきは非常に優しかったが未熟だった。僕の背中の表面の垢しか、こそぎ取っていない。もっと奥に、もっと内側に、本当に醜悪な垢が存在する。その垢をえぐり取ってくれてこそ、真に凄みのある垢玉と成り得るのだ。



 数回の繰り返しにより、僕の垢は殆ど失われている。その確信があった。藍ちゃんの集中している息遣いが背中に聞こえる。



「終わり」



 リサさんが言う。時間は体感でいうと三十分くらいだった。僕は、ゆっくり起き上がると、リサさんは僕の目の前にペンダントを差し出した。



「おめでとう、これが君の垢玉ね」



 僕の垢玉は醜悪だった。残酷なまでに醜い表情をしている。色はリサさんに似ている、紅に近い赤い色をしている。のぞき穴は後ろについていて、開くと中が見える。チェーンは霞んだ銀色をしていた。



「……ありがとう、ございます」

 僕は、自分の垢の禍々しさ眺めているうちに鳥肌が立つのを感じた。あんな恐ろしい物体をリサさんは持っている。



 僕のキタナラシイ垢玉を、リサさんはその美しい指先で加えている。



「頑張ったね」

 リサさんは、藍ちゃんに声を掛けている。