幼い頃、両親に連れられて参加したパーティーでのこと。
 きらびやかな雰囲気に圧倒された私は、会場の隅っこのカーテンに隠れて時が経つのを待っていた。

『どけよブス、気安くオレにさわるなよ』

 どこからかそんな声が聞こえてきて、出どころに目をやると、私と同じくらいの歳の子に暴言を吐く偉そうな子どもがいた。

 押されて尻もちをついた女の子は泣いていて、けれど誰も手を差し伸べようとはしなかった。

 相手がこのパーティーを主催する社長の息子だと、参加者の全員が知っていたからだ。

 私は両親を探したけれど見当たらず、辺りには女の子の泣き声だけで響いていた。
 異様な空間だと思った。
 そして私は、その生意気な男の子の横柄な態度が許せず、ぎゅっと手に力を込めて近寄った。

『やめてよ。この子、泣いてるじゃない』
『は?』

 泣いているその子の前に立ち、庇うように手を広げた。
 正面から伺えた生意気な男の子の顔は、驚くほど整っていて一瞬たじろいだのを覚えている。