新しい学年。新しいクラス。新しい友達。


春は心浮き立つ季節だと表現する人も多いけど、慈雨にとっては少し憂鬱な季節。



「おはよー、慈雨」


慈雨が玄関を開けると、目の前に萌香が立っていた。


「おはよう、ごめん遅くなって」


緊張で食事が喉を通らず、待ち合わせ時間を5分ほど過ぎていた。


「いいよ、いいよ。それよりさー、昨日のAOの新曲!」


萌香がピンク色の唇を震わせて、声を弾ませた。


校則を守って地味な風貌をしている慈雨とは異なり、萌香は丈の短いスカートに、すっぴんメイク(と本人は言い張っているがかなり濃い)に、茶色がかった巻き髪と、なかなか攻めた格好をしている。


先生から注意されると、


「私、白人とのクォーターなので、もともと髪茶色いし、肌白いし」


なんて、苦しい言い訳をして。


それでも、なぜか周囲が許してしまう。


そんな得な性格をしていた。