『――…永海都市には、世界中から観光客が訪れます。都市の南に広がる海は、まさに果ての無い世界。地上の蒼海と呼ばれています』


「お弁当しか作ってこなかったからねぇ。ばあちゃん流行には疎くてダメだ」

「わたしなんて高校生だけど、永海都市の詳しいこと全然分かんないよ?楓莉と侑吾くんに驚かれるくらい」

「…澪乃ちゃん」

「ん?」

「ありがとうねぇ」



いつも感謝を伝えてくれるおばあちゃんの眉は、決まって下がり切っている。


…知ってる。おばあちゃんはわたしに、お店を手伝うことなく普通の学校生活を楽しませてあげたかったと思っていることを。

それが苦しいほどに伝わってくるから、わたしも曖昧に笑うのだ。

自分の意思でお店を手伝っていた。自分の意思で、大好きなおばあちゃんと働ける時間を優先してきた。



「お礼を言うのはわたしのほうだよ」

「…ばあちゃんね、澪乃ちゃんにはもっと学校を楽しませてあげたかった。楓莉ちゃんと放課後にお出かけしたり、クラブ活動に打ち込んだり、」

「………」


「好きな人と一緒に今を楽しむことだって、」

「おばあちゃん。もういいってば」



…なんで。

なんで、こうなっちゃうかな。