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興味はあっても、どこか他人事だった。
もう永海都市に行くことはないだろう。勝手にそう決めつけていたから。
「澪乃ちゃん、お味噌汁運んでくれるかい」
「うん!…あ、今日は油揚げ入ってるっ」
「今日のお味噌汁はね、お豆腐と揚げに小松菜も入ってるのよ」
楓莉と侑吾くんを見送ったあと、数人のお客さんにしっかりお弁当を届けて一日が終わった。
午後9時。遅い晩御飯だけれど、もう何年もこの生活だ。何よりおばあちゃんの顔を見て食卓を囲めるこの時間が、大好きだから。
…それも来週でひと区切りなのだと思うと、やっぱり淋しいものはある。
「「いただきます」」
『――続きまして、本日の特集は永海都市についてです。我が国を象徴するスポットでもある永海都市は――…』
「…また永海都市だ」
「澪乃ちゃん、ばあちゃんこの永海都市っていうの詳しくないんだけど、すごいところなんでしょう?」
「うん。世界でも有名な綺麗な海があって、周辺にテーマパークとかデパートとか…とにかくなんでもあるところ」
「それはすごいねぇ」
「美術館もあるから、おばあちゃんも楽しめるよ」
「まっ!行くしかないねぇ!」
「あははっ、退院したらゆっくり行こうね」
今日の晩御飯は、さわらの西京焼きがメイン。
おばあちゃんお手製の西京味噌は絶品だ。まろやかな甘みに、口角は上がる一方だった。