「あ、おばあちゃん!ごめん気付かないでっ」

「いいのよぉ。楓莉ちゃん侑吾くん、本当にいつもありがとうねぇ」

「とんでもないです!またすぐ買いに来ますね!」

「おばちゃんの生姜焼き弁当、今日ずっと楽しみにしてたんだー」

「あら侑吾くん、嬉しいこと言ってくれるねぇ。ありがとう」



…いけない。お客様が楓莉と侑吾くんしかいないとはいえ、まだ仕事中なのだ。切り替えないと。



「れのちん、今度永海都市に一緒に行かない?地上の蒼海見ながらガールズトークしてさー。受験前の思い出作りっ!」

「あー、いいじゃんそれー。地下見つけたらおれに教えてよー」

「……でも…、」

「あら澪乃ちゃん。楓莉ちゃんが誘ってくれているのに、断るなんてダメよ?」

「そうだよれのちん!ってことで約束ねっ」



疾走する弾丸のようなテンションの楓莉。…こうなるともう止められないことを、わたしは少しは理解しているつもりだ。



「今度ね、今度」



……永海都市。

彼と一緒に行ったあの日が、わたしの知っている最後。



わたしの心だけが、進化できずに止まっている。