恋愛なんてしている時間は無い。

それは、正直な気持ちだったの。



「ずっと西木さんのこと好きだった!付き合ってくだ――…」

「ごめんなさい」



目の前の彼が言い切る前に、否定の声色を落としたわたしは

…ひどい女だと言われてしまうだろうか。



「あ…。わたし、受験に集中したいので。気持ちには応えられないです」

「っ…そ、そっか。分かった!俺も急にごめんっ」

「ううん、こちらこそごめんなさい」



西木澪乃(にしきれいの)、高校3年生。俗に言う受験生だ。


初夏のとある日の昼休み

おそらく同学年なのであろう、名前は知らない彼の告白をお断りした。


校舎裏の目立たない風が、わたしの制服のスカートを力なく揺らしたのだった。