Sapphire〜海賊に魅入られた少女〜

「何をしている?ここでの争いは禁止のはずだぞ?」

出入り口となっている大きなドアが開き、海賊らしい豪華な赤いコートを羽織った男性が船員たちを後ろに引き連れて入ってきた。長い黒髪を後ろで束ね、まるでガーネットのような赤い瞳は今まさに殺し合いをはじめようとしている二人の海賊を睨み付けている。

「ディ、ディアン・ハンター……」

「ヤベェ、海賊ラピスじゃねえか!」

殺し合いを始めようとした二人だけでなく、その周りにいた仲間たちも顔を青ざめ、体をみっともなく震わせている。それは、これだけ目の前にいる海賊が恐れられている証拠だろう。

海賊ラピスーーーディアンが船長を務めているこの海賊は、最も海賊に恐れられている海賊として有名だ。狙った獲物は一人たりとも逃さず、冷酷な仕打ちも一切容赦なく行う。海軍と何度ぶつかっても誰一人捕らえられることはなく、世界中の海を支配していると言っても過言ではない。

海賊ラピスはこのホテルには半年に一度訪れ、長く泊まってくれる。ホテル側としてはありがたい太客なのだが、サフィーはこの海賊団、船長に苦手を通り越して恐怖を抱いていた。