Sapphire〜海賊に魅入られた少女〜

だが、海上で好き勝手に暴れ回る彼らに「争いごとをしない」というルールは無意味なことが多い。海賊同士のぶつかり合いはしょっちゅうあり、その度に従業員であるサフィーの胃はキリキリ痛む。

「プレーズ!お客様にコーヒーと何か軽食をお待ちして!」

サフィーは近くにいた同僚に頼み、同僚は首だけを縦に動かして厨房へと走っていく。その間も海賊たちは睨み合い、ついに懐から一人は刀剣ファルシオンを、もう一人はショットガンを取り出してしまった。

「ぶっ殺してやる!!」

彼らのその言葉は、一般人が使う脅しの言葉ではない。彼らが「殺す」と言えば、必ずその相手は殺される。サフィーは震える手を何とか動かし、「落ち着いてください、お客様!!」と声を上げた。だが、彼女一人を退かすことなど海賊たちには容易いことだ。

「邪魔だ、退け!!」

「きゃあッ!」

強く突き飛ばされ、サフィーは床に尻もちをついてしまう。海賊二人は互いに武器を構え、今にも乱闘が始まってしまいそうだった。その時ーーー。