「お帰りなさいませ、お待ちしておりました」
山の中にあるホテルで働き始めて数ヶ月。サフィーは心穏やかな日々を過ごしていた。
ここに訪れるのは、旅人や家族連れがほとんどだ。海賊という存在が立ち入ることはなく、変に緊張する必要もなく、肩の力を少し抜いて仕事することができる。
「お部屋はこちらになります。何かありましたら、このベルをお鳴らしください」
ペコリと頭を下げ、部屋を出る。ロビーの方に戻ると、支配人が和やかな笑みを浮かべてやって来た。
「サフィー、お疲れ様」
「支配人、お疲れ様です」
このホテルの支配人はいい人だ。サフィーが嫌がることを強制することなく、従業員一人一人の意見をきちんと聞いてくれる。
(あのホテルをやめて正解だったわ)
時計を見ると、もう仕事が終わる時間だ。サフィーは同僚たちに挨拶をし、ホテルを出る。
「あっ、そういえば卵を切らしていたんだわ」
今日の夕食はカルボナーラが食べたい気分だ。サフィーは急いで山から離れた市場へと向かう。


