「お館様はなんと申したんだ」

「信玄の元に行きたければ行くが良いって」

「相当ご立腹だっただろう」

「それが、寂しそうにつぶやいた感じで」

「そうか、お館様は嫉妬されたんだろう」

「まさか」

信長様が嫉妬だなんて……でも怒っているのは事実だよね。

このまま、距離をおいた方がいいよね。

ちゃんと謝って、それから信長様と距離をおこう。

私はこの時代の人間じゃないんだから。

マミは天守閣に向かった。

信長は外をぼんやり見ていた。

「信長様、すみませんでした、信玄様と約束はしたような、しなかったような、覚えていません、でも私はこの城において頂きたいと思っています」

信長の様子からは、どう思っているのか伺い知ることは出来なかった。

「失礼します」

マミは天守閣を後にした。

それから信長はマミを天守閣には呼びつけることはしなかった。

あれから一言も口を聞いてもらえない。