激情を秘めた警察官はウブな令嬢を娶り溶かす~1年で婚約破棄するはずが、敏腕SPの溺愛が止まりません~

寝支度を整え休んでいると、ドアがノックされた。
慧さんだ。

「詩乃、入っていいかな」

「どうぞ」

付き添ってくれていたお母さんと入れ替わりで、慧さんが部屋に入ってくる。

わたしがお風呂に入っている間に、慧さんの着替えも明日のスーツも用意してあって、両親の仕事の早さに閉口した。
お風呂上りの彼は、新品の寝間着に着替えている。
いつもはパリッと後ろに流している髪がしっとりと降りていて、普段とは違う色気を感じる。

「お風呂ありがとうございました」

「じゃあ、詩乃をよろしくね」

お母さんは意味深な笑いをする。
慧さんは戸惑いながら頭をさげた。
お母さんが部屋をでると、慧さんはため息をつく。

「ごめんなさい。ふたりとも強引で」

「いや、俺も詩乃が心配だっかたら声をかけてもらえてよかったよ。隣、いい?」

慧さんがベッドの端を指さした。
いつも来たときは、鏡台の椅子に座るのに珍しい。

「う、うん」

少し横にずれて、スペースを作る。

「お客様用の椅子がなくてごめんなさい」

「とんでもない。失礼するね」

慧さんがゆっくりと据わるとベッドが軽く揺れた。
ふたりでベッドに座ると変に緊張した。
つい、いつもの花柄のネグリジェを着てしまっていることを思い出し、後悔する。
シルクのパジャマを着ればよかった。

前髪を丹念に手ぐしで梳かし、化粧をほどこしていない顔を隠した。
所在なくいると、慧さんはふっと笑った。

「気分はどう?」

「ちょっと疲れてるかな」

本当はまだ緊張しているのか、全然眠れそうにない。
ひとりでベッドに入ったら、延々と今日の事を考えてしまうだろう。

(もっと一緒にいられたらいいのに)

そんな感情が浮かんで驚く。

今日のことは怖くて仕方が無かったけれど、この家に慧さんがいてくれるというだけで、とても心が落ち着いた。
顔をみるとほっとする。

ちらりと時計を確認する。そろそろ日をまたぐ。明日に支障がないように、早く解放してあげなくてはいけない。

「あの、もう大丈夫なので、慧さんは客間で休んでください……」

「本当に? ちゃんと寝れそう?」

「……うん」

嘘をつくのは苦手だ。目を見れない。