紬が梓の腕を引きながら三人で行動するようお願いしていると、突然蓮の隣から甘ったるい声が届いた。
「蓮〜、二人で一緒に学園祭を周ろうよ〜。」
聞き慣れた声が耳に届き、蓮を誘惑している人物に視線を移すと…。
そこには、蓮に三年間想いを寄せている花音が蓮の腕を揺さぶっていた。
「よっ!花音。」
「ねっ、お~ね~が~い~。」
花音はここぞとばかり豊満な胸の谷間に蓮の腕を挟み込んでセクシーに誘惑。
蓮は柔らかい感触が心地が良いのか、鼻の下を伸ばしている。
その様子を正面で見ている私と紬がドン引きしていたのは言うまでもない。
二人とも花音の二重人格なところはよく知っている。
男には甘えてベタベタし、女には悪口や意地悪など言って厳しい態度をとる。
多分、蓮は彼女の裏の顔を知らない。
だからバカみたいにのん気でエロい顔をしている。
「花音と一緒に行ってくればぁ?」
蓮の表情が何かムカついたから冷めた目で冷たく当たった。
でも、紬は私達の間に入って止めた。
「梓、それは言っちゃダメだよ。蓮くんは私達と周るんだから。ねっ、蓮くん。」
「えっ!…あっ、あぁ。悪りぃな、花音。お前と一緒に周れないわぁ。」
「えーっ!!」
この四人の中で蓮を取られまいと一番必死になっていたのは、私達の復縁を願っている紬であった。