梓に続き大和にもフラれて寂しさに拍車がかり、一旦寂しさを紛らわす為に隣のクラスの奏の所へ向かった。



…だが、奏のクラスは何だか騒々しい。

後方扉に人だかりが出来ていたので、人の頭の隙間からヒョイとその様子を覗いてみると……。
黒板前に立つ奏の目の前で女同士が論争していた。



対立する女達の目からは、バチバチと火花が散っている。
奏はそれを見て手を出すどころか、『まぁまぁ』と気弱に互いをなだめるだけ。


またか……。
それが正直な感想だった。


奏はあちこちの女にちょっかいを出して、本命を一人に絞らず常に二股をかけている。
だから、女同士の争いが絶えない。




俺は、火元が落ち着いた頃を見計らって、女を宥めている奏の傍へ行き耳打ちをした。



「奏、今日クラブ行かね?」



騒ぎを見届けている野次馬からしたら場違いな言動だと思うかもしれないけど、三角関係の縺れなどよく目にしてる俺からすると、特に気にも留めていなかった。

決して空気が読めない訳ではない。



勝手ながら、俺の中でトリオの役割は決まっている。
スポーツで遊ぶなら大和。
夜遊びなら奏。

梓と大和にフラれて傷心している俺は、今晩酒で心を癒そうとしていた。





ところが…。
女から目線を外した奏からは、衝撃的な返事が返ってくる。



「…よせ。酒は身体に悪いからやめておけ。…それに、踊るなんてもっての外だ。」

「…え、何?…今さら?」



奏は腕を組みながら俺の誘い断り、呆れたように眉尻を下げた。



女同士の論争にはほぼ無関心だったのに、俺の話になると急に説教臭くなったのは何故だろうか。

すると、奏は何事もなかったかのように急に女達の間に割り込み、俺は輪から外されてポツンと一人取り残された。