ーー最近、周りの人達の様子がおかしい。
いや、正直に言うと俺の友達にはまともな奴の方が少ない。
何の変哲も無い、ある日の放課後。
「今日はやけに空気が乾燥してるせいか、喉が乾かない?」
教室で帰り支度中の梓の席の隣に座った俺は、二人で外にお茶でも飲みに行こうと思ってデートに誘った。
だが、梓はエッと驚き身体を氷のように固まらせている。
その時は、梓がこれから高梨と会う約束をしていて、俺が横からお茶に誘ったからなのでは?と推測していた。
…しかし、そこから彼女の態度は急変。
梓は急に俺の腕をガシッと掴むと、一瞬にして瞳にジワッと涙を滲ませた。
「蓮…、喉が渇いちゃったの?大変!いま飲み物を買って来るから、一歩もここを動かないで待ってて。絶対動いちゃダメだよ!約束だからね!」
「えっ?!あっ…あぁ…。」
ひっ迫した様子でそう言い残すと、目を光らせながら猛ダッシュで俺の元から離れて行った。
ほんの軽い気持ちで誘った。
別にそこまで喉が乾いてる訳じゃないし、彼女との時間を楽しみたかっただけ。
それなのに、突然動くなと指示されて逆にどうしたらいいか分からなかった。