ーー放課後。

大和は蓮の病の件で頭がいっぱいになり、何一つ手付かずにいた。
奏と駅まで一緒に帰宅している最中、蓮の件に触れた。



「聞いた?…蓮の話。」

「蓮がどうしたの?梓と上手くいったとか?」


「違う、余命の話だよ。」

「はぁ?余命?何それ……。」



奏は道端でいきなり変な話を始めた大和にケタケタと笑う。

しかし、大和は奏の反応からしてまだ知らされていないんだと思い、沈痛な面持ちのまま話を続けた。



「あいつ……、もうヤバイらしい。」

「ちょちょちょ…ちょっと待って。何、そのマジ反応。蓮の余命が何?もっと詳しく説明して。」


「どうやら不治の病にかかったらしい。『俺にはもう時間がない』とか言って病の暴露をしたとか。」

「はぁ?!マジか?…しかも、不治の病なんて相当ヤバイな…。因みにその話を誰から聞いたの?」


「梓。」

「あー、ダメダメ。梓ならアテにならねぇし…。あいつはカン違いするし、異様なくらい話を盛るから。」



一気に緊張感から解放された呆れ眼の奏は、ヒラヒラと手を横に振る。
奏は、蓮の相談役を受けてから梓の性格を熟知していた。

だが、大和は蓮の現状を誰からも知らされていない奏を不憫に思う。



「でも、蓮が突然梓とやり直したいって頭を下げたり、急にかわいいとか言ってきたらしい…。梓自身も涙ぐみながら蓮の病気を心配していてさ。」

「そりゃ相当キテるな…。梓にかわいいって言うなんて、よっぽど調子が悪いんだろうな。」


「…だろ。だから、俺らだけでも蓮の身体を労ってあげよう。」

「あぁ…。俺も最大限に努力する。病気の事はショックだけど、教えてくれてサンキュー。」



二人ともどこかで梓の話が嘘臭いなぁと思う一方で、普段から仲良くしている蓮がこの世からいなくなる恐怖を覚えると、自然と表情が暗くなった。




梓のほんの小さな勘違いが誤解を招き…。
まるで伝言ゲームのように仲間へと伝わっていく。

自分に纏わる偽情報が裏で出回ってる事を知らない蓮は、今日も元気いっぱいに梓を追い回している。