「俺…、うっかりしてたわ。」
蓮はこの一瞬で人が入れ替わってしまったかのような低いトーンで言った。
振り返ると、表情を隠すかのように手首を掴んでいる反対側の手で自身の顔を覆っていた。
「いつか、お前がまた俺を許してやり直してくれると思っていたけど。…何だ、この気持ち。ウズウズすると言うか…ムカムカすると言うか……、許せねぇ……。俺、おまえにいく事にするわ。」
「…えっ?」
「最近、花音に言い寄られてて、付き合うかどうか迷っていたけど…。やっぱり、やめる。俺、お前とやり直したい。」
蓮は手を顔から外すと、寂しげな目を向けた。
蓮への気持ちは友達へと移行していたけど、彼自身は気持ちの根詰まりを起こしている。
「……何言ってるの?さっき見たんでしょ、私達の関係を。それに、どうしていつも計画性がないの?私とはもうとっくに別れたんだから、花音とつきあえばいいじゃん。」
「別に花音が好きな訳じゃないし。」
「ふざけないで!今さら何?散々私の気持ちを逆撫でしておいて……。蓮とはもう付き合えないよ。」
「……俺、今から高梨に戦線布告してくるわ。」
「ねぇ、いま私の話聞いてた?そんな事したら、先生を傷付けちゃうって事くらいわからないの?」
「でも、高梨からお前を返してもらわねーと。お前は心がどっか迷子になっちゃっただけだろ。そろそろ俺んとこ帰ってこい。」
蓮はいつも一方的。
昔からそう。
計画性がないし、私の気持ちなんてお構いなし。
しかも、強引で馬鹿正直だ。