ーーだけど、本当の事は言えない。
先生を傷付けたくないから今日の出来事は胸の中に封印しないと。
ごめんね…、先生。
「スマホを無くしちゃって。一日あちこち探していて…、連絡出来なくて…。」
息を吐くように口から嘘が飛び出てくる。
本当は嘘なんて大嫌いなのに…。
『そうだったの。随分心配したよ。それよりスマホが見つかって良かったね。どこにあったの?』
「えっ…あっ。…警察で。」
『そっか、誰かが警察に届けてくれたんだね。良かった。…明日なら会えそう?』
「うん。心配かけてごめんなさい。」
怖い…。
心配を他所に嘘で塗り固めていく自分が。
昨日までの自分はこんなんじゃなかったはずなのに。
だけど、先生とのデートをすっぽかした事よりも、蓮がこの世からいなくなる不安の方がずっと大きかった。