一日中蓮に振り回されて疲れきった身体で自宅の階段を上り、二階にある自分の部屋へと戻った。
扉を開けて部屋の香りを嗅いだ瞬間、思わず吐息が漏れる。



一日中机の上に放置していたスマホは、着信を知らせるランプが点滅。
感情の起伏が激しい一日で疲れてしまっていたせいか、朝までしっかり覚えていたはずのデートの約束をすっぽかしていた事すら忘れてしまっていた。



数時間ぶりにスマホに手を触れてホームボタンを押すと……。
電話のアイコンには7という着信履歴を示す数字が表示されている。

すかさずアイコンを開き、何度も電話をかけてきてくれた先生に電話をかけた。
スマホを耳に当てると、彼は1コール目で電話に出た。



『梓っ?ようやく繋がった…。無事なの?今日一日中電話がつながらなかったけど…。何かあったの?』

「…連絡しなくてごめんなさい。」



電話の向こうからは、一度も聞いた事のないような焦り狂う声。
先生は私からの電話を心配しながら待ち構えていたんだと思う。

秘密の恋愛をしている私にとっては、スマホしか連絡手段がないのだから。



当たり前だよね。

私は週一度の大事なデートをすっぽかした上に、丸一日先生の事を放ったらかしてしまった。
彼女の私を心配するのは当前だよね。