梓は不安に駆られながら半目涙でしょんぼり立ち尽くしていると……。
暗闇の奥からレジ袋を片手にぶら下げている蓮が小走りで戻って来た。



「遅くなってごめん。焼きそばの屋台めっちゃ混んでてさ。」



軽く息を切らしながら笑顔で戻ってきた蓮は、孤独と不安の狭間で戦い続けていた梓の気持ちを知らない。

梓は蓮の無事な姿を見て安堵すると、瞳から涙が一粒こぼれ落ちた。



「蓮が居なくなったと思って心配しちゃったじゃない。私を一人にさせないでよ。」



だが、梓の想いを知らない蓮は目をキョトンとさせる。



「大袈裟だなぁ。俺ならここにいるよ。そんなに心配するなら連絡すれば良かっ……あ、そっか。スマホはお前の自宅か。」



と、蓮はあっけらかんと答えた。



「戻って来ないから容体が悪化してどこかで倒れちゃったかと思った。」

「えっ…、二日酔いはもう治ったけど。何言ってんの?」


「二日酔い?……誤魔化しても私にはちゃんとわかってるんだからね。」



病気を誤魔化してるって事は、やっぱり本当の事を言いたくないのかな。
私に心配かけさせたくないと思ってるのかな。
私が病気だという事に気付かなければ、このままずっと隠し通すつもりだったの?



梓は蓮に会えた事による安堵と、病気を隠し通そうとしている不安で涙が止まらなくなった。



「…泣くなって。一人で待っていたのがそんなに寂しかったの?」



不思議そうに頭を傾けた蓮は、自分が病気だと思い込まれてる事も知らずに心配で涙を流してる梓の頭をヨシヨシと撫でた。