ヒュルルルル〜…… ドーン……



ーーもう、10分くらい経ったのだろうか。



一人で見上げる打上花火。
花火が空に大きく輪を描く度に周囲の観客が騒めいている。



見上げた瞳に映り出される花火は……

空高く色とりどりの光が舞い散り
心臓を打ち抜くような低い爆音を響かせ
キラキラと大きく輪を描いた後は……。


力を失わせながら
点々と輝きを失わせて
脆く…
儚く……

原型を留めることなく静かに消え去って行く。



それは、まるで私と蓮の恋模様のように。




蓮は砂浜に私を一人きりで待たせたまま。
屋台へ行ったっきり帰って来ない。




探しに行った方がいいかな。
でも、ここを離れないようにって言われたし…。

行き違いになったら困るし。
スマホを持ってないし。
お金もないし。
蓮の両親も来ないし。


もし、容態が悪化して倒れたりしてたら……。





梓は様々な妄想を描き、目眩がしそうなほどの不安に襲われると、花火大会どころではなくなってしまった。