でも、私を散々傷付けたクセに自分のことを棚に上げて責め立てるのは虫唾が走る。



「お前さぁ、本当は高梨と付き合いたかったから、俺と別れたんじゃねーの?」

「いい加減にして。あの時の事をまだ反省してないの?自分が悪いクセに都合のいいように解釈しないで。」



彼が難癖つけてくるから、私もムキになってつい喧嘩腰に。
でも、本当はこれ以上関係を拗らせたくない。



「いま俺が何でここにいるか分かる?」

「そんなの知らない。」


「体育館前でお前を見かけたから話をしようと思ってついて来たの!少しでもお前と関係改善をする為にな。そしたら見たくねーもんまで見ちまったし。」

「バカ!趣味悪っ。覗き見なんてしないでよ。」


「だから、いま見たくねーって言っただろ!」



私達は、まるで嵐の日の荒れた波のようにお互い気持ちをぶつけ合う。


これじゃあ、痴話喧嘩。
今さら言い争っても無意味なのに。
友達に戻ろうとしていた努力が、全て水の泡になる。

だから、無意味な言い争いに終止符を打とうと思った。



「とにかく、黙っててね。…先生との関係がバレたら、多分退学になっちゃうから。」



梓はプイっと向けた背中越しにそう言うと、その場から離れようとして三歩足を進ませた。


…が、次の瞬間。
蓮は大きく手を伸ばし、まるで手錠をかけてしまったかのようにガッシリと梓の手首を掴んだ。