梓は半年ぶりに蓮の自宅を訪れたが、丸二年通っていたせいか、自然と付き合っていた当時の感覚に戻ってしまい、まるで我が家のようにのんびりと寛いでいた。
別れた事すら忘れてしまっていたかのように、蓮の両親と楽しく会話をしながら食事。
その姿は、まるで家族の一員のよう。
蓮の両親とは当時からとても仲が良かった。
昼食を終えた後、再び蓮の部屋に戻って対戦アクションゲームをして一緒に遊んだ。
負けないように身体とコントローラーを動かしながら操作をしていると、蓮はテレビ画面を見ながら言った。
「今日、地元の花火大会あるじゃん。」
「季節外れのやつでしょ。」
「そうそう、毎年恒例の。」
「そっか、花火大会今日だったんだね。」
二年連続、二人で行った花火大会。
夜風が冷たかったから、蓮と肩を寄り添わせながら花火を見ていた。
打上花火の明かりに照らされた蓮の横顔は、とても艶やかだった。
「その花火大会なんだけど、一緒に行かない?」
「いいけど。……まさか、ロマンチックな雰囲気に紛れてチューでもしてくるつもりなんでしょ。」
「お前の頭、相当イッてるな。」
「…え、違うの?」
「アホか。うちの両親がお前を連れてけって。四人で一緒に行くって事。」
「それならいいけど…。」
蓮は了解した梓を横目で見ると、安心したようにフッと口元を緩めた。
こうして、自宅から蓮に拉致をされた私は、先生との約束もすっかり忘れて、予定外に予想外の展開を重ねた一日を過ごす事になった。