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「…お前の夢って、何?」



蓮は梓が解き終えた数学ワークの丸付けをしながら、教科書と睨めっこをしている梓に問いかけた。



「いきなり夢って言われても。まだ決めていないよ。…蓮は?」

「高校の数学教師。」


「…え、どうして?」

「わかるだろ。お前とやり直したいから。」


「ふーん、あっそ。」

「それは嘘だけど…。『ふーん、あっそ』って俺に興味無さ過ぎだろ。」



蓮は冷たく遇らわれると、ムスッと口を尖らせた。



夢かぁ…。
まだ見つからないなぁ。

でも、先の人生が短い蓮でも前向きに将来を考えているんだ。
偉いなぁ。





蓮と付き合っていた時は、高校を卒業したらすぐにでも結婚したいと思っていた。
交際は双方の両親公認だったけど、さすがに結婚は早すぎるから反対したかな。

でも、日を追う毎に現実が見えてくると、気持ち一つだけでは一緒になれないと悟った。




蓮は丸付けを終えたワークを渡しながら言った。



「俺と一緒に勉強して一緒に夢を探そう。」

「……蓮と一緒に夢?」


「そ、二人で夢探し。(そうすれば卒業を機にあいつと結婚しなくて済むかもしれない)」

「う、うん…。(夢が叶った頃に蓮はこの世にいるのかな…)



梓は再び感情の波に飲み込まれながらも、受け取ったワークをパラパラと開いて出来具合いを確認。
すると、結果を目の当たりにするなり言葉を失った。

正直、丸付けではなくバツ付けに。



「ちなみに、かなり間違えてたけど。」

「…。」



ため息交じりの蓮が一瞬本物の教師のように見えた。