梓は蓮がトイレに行った隙を見計らって、部屋の中から病のヒントになりそうな物を探す事にした。



この部屋に足を踏み入れてから今の今まで何のヒントも得られなかったから、トイレから戻って来る前にブツを探さないと…。

まず最初に机の一番上の段の左右の引き出しを勢いよく同時に開けた。

勿論、時短のつもりで。



ガサッ……



うっ…。
汚いのは部屋だけじゃなくて、引き出しの中もやっぱり汚い。



最大限まで引かれた引き出しの中は、小学生の頃から整理整頓していないと思われる。
昔流行ったキャラクターの消しゴムや、折り紙やキーホルダーなど乱雑にしまってあった。



…ここは、開かずの間だったか。

もう高三なんだから机の中くらい整理整頓すればいいのに。



汚い机に呆れつつも、蓮が戻って来ないかと扉を何度もチラ見している私は不審者とそう変わらない。



だが、そんなのお構い無し。
病の証拠となる品を探すのに必死だったから、机の引き出しを次々と開けていった。

勢いが止まらない手のスピードは、実に新幹線以上。




刻一刻と迫る時間。
未だにヒントになるものは何も見つかっていない。


早くブツを……。
一刻でも早くブツを見つけ出さなければ。



気は焦る一方だけど、まだ一ヶ所だけ開けてない引き出しがあった。
鍵がかかっている右から2段目の引き出しに、何かヒントが隠されているのかもしれない。


しっかりと施錠されているけど、元カノの私には鍵の隠し場所くらいお見通し。



まるで自分の物を扱うように、机の上の筆記用具が入っている筒型のケースの中から鍵を取り出し、躊躇いもせずに開錠した。