梓は足元に散乱している本や服を拾い上げて、何となく片付け始めた。
だが、梓の想いなど届いていない蓮は指図する。
「部屋はそのままでいいから、とりあえずベッドに座れよ。」
「いや、遠慮しておきます 。(思惑通りにはならない)」
梓はしかめっ面で顔を左右に振り、ベッドの上に座る事を頑なに拒否した。
それからテーブル付近の荷物を一通り片付けて、いつでも逃げれるように扉側の床に腰を下ろすと、蓮は一言。
「何で部屋の扉を閉めねーんだ?」
「…一応ね。」
「疑り深いなぁ…。わかったよ。俺は閉めねーからな。」
すると、このタイミングでおばさんが茶菓子を持って部屋に現れた。
ミニテーブルにそれぞれのお茶を置く。
「お茶とお菓子持って来たからね。二人で仲良く食べるのよ。」
「ありがとうございます。」
蓮の家には週末に遊びに来る事もあったから、いつもこんな感じで茶菓子を出してもらっていた。
今や小さな事ですら懐かしい。
すると……。
「ごゆっくり。」
おばさんは席を立つと、防犯用にと開けておいた部屋の扉をゆっくり閉めていった。
「!!」
「俺は閉めなかったからな。」
私達に気を遣ったおばさんは、やっぱり私達が別れていた事実を知らないようだ。