「おぉ、梓ちゃん。うちに遊びに来るなんて随分久しぶりだねぇ。」



深刻に悩み始めた梓に対して、おそらくランニング帰りだと思われる蓮の両親が、明るい声で背後からやって来た。



蓮「…あ。父さん母さんお帰り。」

父「蓮、こんなところで何やってるんだ。玄関で立ち話していないで、早く梓ちゃんを家に上げてやりなさい。」

梓「お久しぶりです。おじさん、おばさん。」
梓はぺこりと頭を下げる。



蓮「こいつ、なかなか家に上がらねーんだよ。」

父「梓ちゃんは遠慮してるのかな?…さ、家に上がって。」

母「寒くなってきたからここで話していても風邪を引くだけよ。」

梓「あ…、はい。」



蓮の両親は優しくて明るい。

もしかして蓮の容体が良くないから、本人の前では気遣って明るく振舞ってるだけなのかもしれない。

蓮の部屋に上がり込めば、お薬手帳とか、病院の医療明細書とか、何か病気のヒントになるものが見つかるかな。
大した病気じゃなければいいけど、もし余命が短かったとしたら……。