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「これからどこに行くの?」



先生とのデートに諦めがかかったその頃。
駅の改札で肩を並べて歩く蓮に行く先を聞いた。



「行けばわかるよ。」

「何でわざわざ電車に乗るの?」


「お前とデートするから。」



蓮に拉致されて、1週間ぶりの先生とのデートがおじゃんになった。


電車に乗ってつり革につかまる蓮は、ギュッと強く握りしめた手を離さない。
扉が開いた瞬間に私が逃げ出すとでも思っているのかもしれない。

先ほど最寄り駅で見た時計の針は10時前をさしていた。



先生はいま私と蓮が一緒にいる事実を知らない。
約束の11時になったらデートがすっぽかされている事に気付くはず。



最悪。
私ったら何をやってるんだろう。
いま蓮と二人きりでいるだなんて知ったら、先生はどう思うのかな。
後でどう説明すればいいの?



「着いたよ。」



自宅の最寄り駅から、二駅先の所で電車を降りた。
ホームに到着した頃には、興奮していた気持ちもすっかり治まっていた。



多くの人が行き交う駅で久々に感じる女性からの視線。
どの角度からも注目を浴びてるのがわかる。
勿論、視線の先は私ではない。


蓮は視線を向けられる事に慣れているからあまり気にしていないかもしれないけど…。
いま彼女でもない私が隣で歩くのは、少し気が引ける。




過去を振り返ってみると、蓮と付き合っていた頃が人生の中で一番大変だったような気がする。