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「蓮………、蓮ってばぁ。一体どこに連れて行くつもりなの。」
手を振り切ろうとして必死にもがくけど、蓮の力に負けて振り切れない。
偽物の10%の可能性は、もはや損の塊でしかないようだ。
「…わかった、わかったからせめてスマホだけでも家に取りに戻らせて。今日は先生と11時に約束しているから連絡しないと。」
「はぁ?スマホなら俺のがあるだろ。」
「バカッ!蓮のスマホには先生の電話番号が入っていないでしょ。」
「だったら、ちょうどいいな。」
「何言ってるの?それじゃあ、先生との約束をどうするのよ…。それに、蓮が突然来たからセットしている最中の髪だって、まだ半分しかカールが終わってないのに。」
「本当だ…マジウケる。」
「蓮〜〜〜っ!」
蓮はクスッと笑うと一度立ち止まり、梓の腕を離して自身の左腕に巻きつけていたミサンガを解き、不器用な手つきで梓の髪を後ろで一本に束ねた。
「これでよし!お前はどんな格好でもいつもかわいいよ。」
蓮はクサいセリフを吐いた後、梓が逃げないようにと再び腕を掴んだ。
梓は恋人時代から滅多に言われない言葉が耳に届くと、驚くあまり逃げる事を忘れてしまった。
蓮…。
一体どうしちゃったの?
かわいいだなんて殆ど言わなかったクセに。
強引で計画性がないのはわかっていたけど、付き合っていた時はここまではひどくなかったよ。