玄関扉を開けると、そこにはニカっと無邪気に微笑んでいる蓮が扉の向こうで待ち構えていた。

深刻そうにしていた昨日とは表情が一変。
普段通りの蓮がそこにいる。



「突然家に来てどうしたの?私に何か用?」

「あのさ、今から俺とデートしよ。」


「え……、今からって。気は確か?そんなの無理に決まってる。私にも予定はあるんだけど。」

「梓のダメはOKって意味だろ?2年も付き合ったから梓の事はよ〜く知ってるよ。…ほら、ブツブツ言ってないで行くぞ。」


「ちょ…、ちょっと…蓮。」



蓮は嫌がる梓の手首を掴むと玄関から外へと引っ張り出した。

そして、明るい声で廊下の奥に居る母に向かって一言。



「おばさーん。梓借りま〜す。」

「ウフフ。行ってらっしゃい。」

「お母さーん!行かないってばぁ。」



閉ざされていく扉の向こうの母親は、梓の思いとは裏腹ににこやかに手を振っている。



お母さん、勘弁してよ。
行ってらっしゃいじゃないでしょ。
娘の嫌がってる姿が見えないの?