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「話がある。」



ーーある日の昼食後。

蓮は机の中を整理している私の前に現れて、半ば強引に手を引いて教室から外へと連れ出した。



現役教師との恋愛という弱みを握られてるから、無抵抗のままついて行ってしまったけど…。
連れて行かれた先は、どういうつもりか体育館の用具室だった。





今日の蓮は少し元気がない。

普段なら朝から私の周りをしきりに付いて回っているのに、今日は耳にイヤホンを挿したまま机に寝そべっていた。

しかも、ここに来る間ひと言も喋ろうとはしなかった。



今はただ黙って背中を向けている。
用具室には、無人の体育館に風が吹き抜けていく音だけが聞こえていた。



「話って…、何?」



私から先に口を開いた。

こんな重苦しい雰囲気になったのは、この場所で先生との恋愛が発覚した日以来。
大事な話があるという事だけは察している。


すると、蓮は背中越しに言った。



「10パーセント…。あるって言ってたよな。」

「へっ…?」


「俺と梓が付き合う可能性だよ。」

「えっ……あ、うん。」



蓮と付き合う可能性は今でも0%には変わりない。

そう答えた時は、紬に先生との関係をバラされたくなかったし、蓮を中途半端に傷つけたくないと思ったから。

でも、まさかあの時の口先だけの返事を、バカみたいに信じていたなんて。