✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「話がある。」
ーーある日の昼食後。
蓮は机の中を整理している私の前に現れて、半ば強引に手を引いて教室から外へと連れ出した。
現役教師との恋愛という弱みを握られてるから、無抵抗のままついて行ってしまったけど…。
連れて行かれた先は、どういうつもりか体育館の用具室だった。
今日の蓮は少し元気がない。
普段なら朝から私の周りをしきりに付いて回っているのに、今日は耳にイヤホンを挿したまま机に寝そべっていた。
しかも、ここに来る間ひと言も喋ろうとはしなかった。
今はただ黙って背中を向けている。
用具室には、無人の体育館に風が吹き抜けていく音だけが聞こえていた。
「話って…、何?」
私から先に口を開いた。
こんな重苦しい雰囲気になったのは、この場所で先生との恋愛が発覚した日以来。
大事な話があるという事だけは察している。
すると、蓮は背中越しに言った。
「10パーセント…。あるって言ってたよな。」
「へっ…?」
「俺と梓が付き合う可能性だよ。」
「えっ……あ、うん。」
蓮と付き合う可能性は今でも0%には変わりない。
そう答えた時は、紬に先生との関係をバラされたくなかったし、蓮を中途半端に傷つけたくないと思ったから。
でも、まさかあの時の口先だけの返事を、バカみたいに信じていたなんて。